未曾有の事態により、異例のシーズンとして迎えた秋季リーグ戦。チームは開幕5連敗と苦しみながらも、後半戦では3勝2敗。最終戦を勝利で飾り、今年の戦いを終えた。度重なる苦境に立ち向かい、乗り越えてきた選手たちは何を語るのか。14日間にわたって彼らの思いをお届けする。
第1日目は杉本泰彦監督。今季は「経験を積ませるシーズン」と多くの下級生を起用した。コロナ禍でチームを率いた今年1年を振り返るとともに監督4年目の来季へチームを一新させる考えを明かした。(取材日11月23日、聞き手=小林夏実)
ーー今年は春季リーグ戦が中止になりましたが
あの状況になって、すごく未知というか恐怖だった。世の中全体が新型コロナウイルスってなんだろうと感染拡大にナーバスになっていたときだったので、野球をやっている場合ではないんじゃないかと思いました。
ーー選手に何か話はしましたか
選手たちは普段なんの疑いもなく野球をやっていた。それが3.11もそうだけど未曾有の危機のときに我々が学ぶべきものは野球ができるのが普通じゃないということ。たくさんの方々が協力してくれたり、たくさんの人たちに守られながら野球ができていたということ。今の選手たちも「感謝する。感謝、感謝」と簡単に言いますけど本当に感謝するとき、感謝の気持ちを知るいい機会だったんじゃないかなと思います。だからそのように選手たちには言いました。常に野球ができるのが普通じゃないと。野球やスポーツは平和の象徴なので、平和なときにしかできない。こういうふうな危機的な状況の中では、我々も一社会という組織の中にいるから社会性っていうのを学ぶいい機会だよと選手には言いました。
ーー今季を振り返っていかがでしたか
3ヶ月解散していてやりたいことはいっぱいあったんですけど開幕が決まっていたので、それに合わせて試合ができるようにする、それだけしかできなかった。体調もあるしけがをしないようにどうしたらいいのかっていうのを考えながらで十分な準備は出来ずにリーグ戦に入ったという感じはあります。
ーー勝率制の戦い方や意識したことは
うちは初戦にエースの村上(総4=智弁学園)がけがをしてしまって大きなハンデを背負ってしまったというところで、前半は5戦連敗。折り返して3勝2敗だったんですけどそこは自分自身もう少し割り切っていけばよかったかなとは思います。1戦目相手エースの時はこちらは勝てれば御の字くらいで、2戦目に2番手の勝てるピッチャーをもっていって1勝1敗にする。エースを欠いて戦力が整わなかったチームとしてはそうすべきだったのかなとは思います。
ーー先発の2番手は松澤(営2=帝京)投手、そして野澤(総1=龍谷大平安)投手でしょうか
そうですね。野澤の場合は期待値もあってリーグ戦前からコロナの関係で入替戦がないっていうのはわかっていたので、うちは下級生も多いチームなので経験を積ませるシーズンだなと自分の中では思っていました。
ーー下級生の起用について
後藤(法1=京都学園)は肩っていう部分では一番です。私もキャッチャーでしたので肩の強さはキャッチャーの一番大事な要素だと思ってますし、彼はその要素を十分に持っています。神宮でマスクを被ったことがあるという経験値はキャッチャーにとってすごく大きいので、思い切って使いました。小口(法2=智弁学園)のファーストなどチーム状況もあったんですけど、いろいろな可能性を探ってみようとも思ってました。
別の話、去年は村上が頑張ってくれて優勝できたんですけど、僕が監督になって、去年と今年は完全に耐えるシーズンだなと思ってましたので、(去年の)春はうまくいきすぎて優勝できたんですけど、秋の実力が当然の東洋大学の結果だと思ってました。ですから去年の冬から徹底的に力を蓄えようと思っていたところでのコロナでしたのでそこは計算違いがあったんですけど、入替戦がないということで思い切った形で来年につながる組織作り、チーム作りができたのは非常にありがたいこの秋のシーズンだったかなと思います。
ーー佐々木(営3=帝京)選手の起用については
スタメン起用を考えなかったわけではないんですけど、佐々木は、1年生の春のオープニングゲームでもDH1番で出たんですね。1シーズン途中まで出たんですけど結果的に自分が思うような結果が出ずにそのことがトラウマみたいになっていた。自分の力を出しきれなかった、ハードルを超えられなかった、殻を破れなかったみたいなところがあって、こいつどうなのかな、レギュラーとして出て来れるかなと思っていたところでオープン戦で降って沸いたようなチャンスが回ってきたので、そこで佐々木自身がチャンスをつかんだのはよかったんじゃないかなと思います。
ーー山崎(営4=愛工大名電)主将はどのような主将でしたか
なかなか結果も出ずにキャプテンとして中軸でね、熟知した気持ちで野球をやっていて、来年のことを思って後藤とか廣岡(総2=拓大紅稜)を使ったりして、悔しかったと思うんですけどその悔しさもキャプテンとしての責任感で耐え忍んでくれて、頑張ってくれたと思います。僕の中では寡黙なキャプテンだったんじゃないかなと思います。
ーー佐々木新主将になり期待することは
僕が監督になって、佐藤(R1年度法卒=千葉ロッテマリーンズ)キャプテン、山崎キャプテンは選手の方で決めたので、監督が決めて立場が人を変えるということもあると思うので決め方に賛否両論あるとは思うんですけど。とはいうものの、チームとして自分たちが決めたキャプテンを自分たちで担いで、自分たちが支えてっていうのが学生野球のすごく大事なところじゃないかなと思っているものですから。選手の方で決めてそれで佐々木キャプテンが出てきたので、佐々木を中心にしてチームがまとまるっていうのを期待しています。
ーーこの冬の強化ポイントはありますか
チームとしてはこの秋、悔しい思いもしましたので来年の春はかっこいい東洋大学の野球を見せたいと思います。これで僕が監督になってから僕と一緒に野球をする選手たちばかりなので、サインから何から何まで全て変えていくよっていう話はしてます。僕は高橋(前)監督の46年の後を受けたんですけど、監督として勝つことを最優先に考えて。勝つことを求められていると思っているので、それには急激な変化はいらないと思っています。変化を少なくすることで勝利が近くなるかなと思ってたんですよ。でももう今の3年生は高橋(前)監督と野球をやっていないので、全部変えるよと。全て変えてますんで、この冬に一人一人考えて、理解してもらって。あと面談で個人的なお願いや目標や目的を話しました。3年生については進路を、自分が何になりたいかっていうのを考えてもらって、そこについては本人がどれだけやるかだと思っています。
ーー最後に来年への意気込みをお願いします
今のこの状況の中で、来年どういったシーズンになるかは不透明で。ただ7チームになるのでそこも含めていろんなやり方が出てくると思うんですけど、それよりもまず自分たちの力をつけるということ。目的を明確にして自分の力をつけることを重点的にやる、ということを選手にお願いして。あとは新しい選手も起用したり、僕は勝つことを目標にやっていきたいと思います。僕が来てから春はずっと優勝してるので、優勝したいなと思います。
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